「伝統」と「革新」の両面をクローズアップ

2011.06.06

エルメスでは日本文化についても、自社の姿勢と重ねるように「伝統」と「革新」の両面をクローズアップしている。エルメスの日本の「顔」でもある銀座の旗艦店メゾンエルメスには、両者の「伝統」と「革新」がいたるところで融合されている。メゾンエルメスは、45センチ角の手作りに近いガラスのプロッターを無数に積み重ねて出来たモダンで実験的な建築だが、設計に関与したデュマは、和紙を通してやわらかい光が全体を包む姿をイメージしたという。「日本文化の美しさを知ってもらうためのささやかな恩返し」なのだそうだ(「日本経済新聞」2001年6月25日夕刊)。エルメス・ジャポン関係者は、夜に建物から明かりが漏れる具合を「濡れ提灯」に喩えている。ちなみに設計を担当したレンソ・ピアノは過去に関西新空港も手がけた、日本文化に対する理解度の高いイタリア人建築家である。この建物については、「日本の都市はいつも動いていて、昼と夜では激しく表情を変える。ガラスも絶えず変化し、透明でありながらも不透明になり、色と時代の気分で姿を変える……」と語る(「CREA」2001年10月号)。各階には馬をモチーフにしたものを中心に由緒ある絵画や写真、彫刻が最低―点は配置され、5階の美術館「アルバム」ではエミール・エルメス・コレクションから選ばれた品々が訪れる者をエルメスの起源へと誘っている。他方、8階はエルメスのコンセプトに即した同時代のアイストの作品を展示するギャラリー「フォーラム」となっており、ここではエルメスの「革新」の部分を垣間見ることができる。